創業までの経緯と歴史の始まり
時は2016年に遡ります。ある日曜日のこと、PriceHubbleの共同設立者であるStefan HeitmannとMarkus Stadlerはドイツ・ヴォレラウでランチをすることにしました。このランチの目的は、新事業のアイデアについて意見を出し合うことでした。
Stefan Heitmannは法学と経済学を専攻。当時すでに、不動産融資コンサルティングを行うスイス大手の独立系企業MoneyParkを4年前に設立していました。数理工学者であるMarkus Stadlerは、当時スイスで経営コンサルティング企業に勤めていました。MoneyParkの設立者兼CEOであるStefanは、不動産事業分野ですでに豊富な経験を積んでおり、新しい事業に関してもこの分野が念頭にありました。
未来に目を向けて
Stefanは、不動産業界が昔ながらの手法に固執し、過去の蓄積データが重視され、物件を探している人や物件所有者、そして販売者に対する透明性が限られていることを理解していました。さらに、不動産業界は保守的な傾向があります。その理由の一つに、商材である住宅やマンションが、長年使用されることを念頭に、何十年も前からレンガで建築されてきたという点が挙げられます。そのため、販売商品は本質的に過去にとらわれたものになってしまいます。特に不動産開発・販売では、これまでどういった建物が建築され、販売されてきたか、そしてどれくらいの広さの住居に需要があったか、を比較検討するのが一般的です。StefanとMarkusはこれを足がかりに、現在と今後の展望に目を向けたいと考えました。
「2016年になってさえ、まるでフロントガラスが何も見えずに、バックミラーだけを頼りに、不動産市場を生き抜いていくような状況には我慢できない。フロントガラスから前方をよく見渡せるのが当たり前のように、この業界の透明性を高めたい」と、Stefan Heitmannは考え、そこから新しい事業のアイデアが生まれました。それは、不動産市場のすべてのステークホルダーのために、データに基づくデジタル商品を活用して透明性を高めることで、より的確に決断を下せるようにし、またプロバイダーとして一層の販売成果を収められるようにする、というアイデアです。
ビジョン - 市場の動向予測
StefanとMarkusが互いに話を詰める中で、膨大なデータベースを活用して、不動産市場の動向を予測することは果たして可能なのか、そして、理解しやすく、使いやすいソフトウェア製品を使って、データの洞察を導き出し、利用しやすくすることは可能なのか、という問いが生まれました。
不動産業界やその関連分野の膨大なデータを分析、そして市場予測に活用できる情報に変換するには、機械学習とAIを取り入れる必要があります。「ほんの数年前までは、クラウドが処理する膨大なデータを運用することは想像もできないことだった。だが、今では、かつてないほどの膨大なデータ情報を運用することができる」と、Stefan Heitmannは機械学習とビッグデータモデルが持つ魅力について語りました。
また、常に最優先とするのは、一般向けの漠然とした情報を提供するのではなく、ビジネスパートナーの「悩み」に直接向き合うこと。これを念頭に、2人は最初から金融・不動産業界のパートナーと緊密に意見交換を行っていました。
共通の目的は明確でした。この新事業において、不動産市場向けに安全で的確に維持・管理されたトップクラスのデジタルソリューションを構築するためのデータサイエンティストやソフトウェア開発者を採用すること。StefanとMarkusは、当初から品質に妥協するつもりはありませんでした。その一方で、PriceHubbleのバックボーンになるデータエンジニアも同時に募集。データエンジニアたちは、何百ものデータソースから得られたデータ素材を作成、監視、検証する必要があります。その最優先事項も、変わらず品質。データストリームの品質を保証することでした。
StefanとMarkusは、天体物理学者1名、機械学習の専門家2名、パートタイムのデータソース・アナリスト1名という小さなチームを編成し、デジタルソリューションの構築計画に着手しました。少人数で始まったこのチームが、無数の情報を収集し、評価し、処理し、そしてついに、正確な予測を提供する自己学習システムの基礎を築いたのです。